失われた花々に対する二、三の刑罰/青土よし
の十月二十八日から、この家には時間が訪れなくなっていた。祖母の外見にも五十五年間変化は訪れ得ず、目を覚ますということも無かった。また、目下、外は雲一つ無い青空の続く昼間だが、この部屋は夜のままだった。日光は家の壁に沿って精確に侵入を禁じられていた。集落で暮らす住民の殆どが、元来時間という概念に対する関心が希薄であった。しかし以上の理由により、ここではそもそも時間という概念を持ち込むこと自体が忌避されていた。たとえば、時間を表す、あるいは時間の経過を感じさせる物質の一切が排除されていた。祖母の趣味で飾られていた花々が主たる対象であった。それを行ったのは彼女の夫、つまり男にとっての祖父にあたる人物だっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)