失われた花々に対する二、三の刑罰/青土よし
 
かった。これが今まで彼の足を祖母の家から遠ざけていた理由の一つであった。
 およそ三時間湿原を歩き続け、ようやく集落に足を踏み入れた。住民の姿は認められなかった。鬱蒼とした植物が複雑に絡み合い、住居と同化していた。更に二十分弱歩いたところに、目的である祖母の家があった。玄関に続く石段は苔が密生していた。男は妻が滑らぬよう注意を払いながら上り、皮革製の戸を捲って家内に入った。後に続くよう妻に促した。彼女は首を横に振ってそれを拒否した。男は仕方なく一人で祖母の姿を探した。家の中は広かったが仕切りが無く、祖母はすぐに見つかった。彼女は五十五年前と変わらぬ姿で寝床に横たわっていた。

 男が四歳の十
[次のページ]
戻る   Point(1)