失われた花々に対する二、三の刑罰/青土よし
 
だった。妻は衣服を身に着けていなかった。黒髪が水に濡れ、身体に纏わりついていた。歩くたびに豊かな胸が揺れた。その瞳はまっすぐに男を見ていた。男は妻の肩を抱いた。やわらかな若い裸体は薫香を放っていた。
 この辺りには、小規模の集落があった。そのうちの一つが男の目指している祖母の家だった。集落に建っている家屋の外壁は、強力な湿気を吸収する蔓植物に覆われていた。風通しをよくするため開口部は広く取られていた。また現在ほどでは無いにせよ、年間を通して降水量が多く、浸水しやすいので、玄関は階段を数段上がった高い位置に設えられていた。彼の祖母は集落の中でも比較的富裕層に属しており、この階段の数がやたらに多かっ
[次のページ]
戻る   Point(1)