あの猫の名前はマダナイっていうんだ、/木屋 亞万
ても困り者だ、穴から抜けたのは本当に列車なのかどうなのか
ニヤニヤとした顔をするので、「夜の底が白くなった。」という続きを読むのはやめた
「木曽路はすべて山の中である。」
と読めば、木曽路というのは三十路のようなものか?と問うてくる
すべてが山の中ということはかなりの剛毛と見た
猫の吾輩がいうのも何だが密林のような毛をかき分けるのはそそるものだ
毛の生えそろわぬ幼子よりもやはり女は三十路だと呟いて足をなめた
「それらの夏の日々、一面に薄の生い茂った草原の中で、お前が立ったまま熱心に絵を描いていると、私はいつもその傍らの一本の白樺の木陰に身を横たえていたのだった。」
と読めば
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