悪魔/salco
 
されないのは
 貧窮、薄幸の限りを前提とし
 厳冬期の児童労働と飢餓を資格条件に
 非行にも現住建造物放火にも走らぬ清廉な
 世知に疎い思考様式の報酬として
 貸与された暫時の現実逃避だから
 もしくは低体温の末期症状であり
 もうすぐ「慈悲」が授与されるからで
 行き交うシカトを決して煩わせず
 推奨される無抵抗主義を貫いたならば
 必ずや脳内麻薬の恍惚が訪れ
 叶わぬ羨望と欲望を思うさま眼前に陳列し
 なつかしい祖母のお迎えをも幻視しながら
 通行を妨げぬ深夜の路傍で
 ひっそりくたばる道理が保証されているとの
 キリスト教的道徳律の体現
 つまりお手本なのであ
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