油と身体/はるな
 
たしは走るのが遅かった。ゴールテープを切ったことはなかった。でもそれで、蔑まれることもなかった。くやしくもなかった。ゴールテープを切りたいとも思わなかった。ゴールテープ、の存在をあんまり知らなかった(だって、いつもびりか、びりから二番目だったから)。
表面張力について教わったとき―たぶん父からだった―コップのふちで、るる、と盛り上がる水のおそろしさ―、わたしはわたしをそれと似ていると思った。なんでかはわからないけど。あるいは似ているといいな、と思ったのだ。

コップのふちで、るる、と盛り上がる水たち。

いろいろの種類の液体や油を凍らせる実験もした。水はやはりおそろしかった。体積が大きく
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