油と身体/はるな
 
きくなるのがとりわけおそろしい気持がした。油はいつまでも凍らなかった。

冷えた油はやさしい気持がした。それは以外なことだった。冷えた油!いろいろの種類の液体を凍らせる実験について、わたしが得たほとんど唯一の感動はそれについてだった。
つめたく冷えた油!
くらくらした。そのときからもう、わたしは言葉や意味のとりこだったのだ。

そして、あの油から、どうやってか、こんなところへきてしまった。ゴールテープ、いろいろの液体、しゃくなげやあじさい、終り続ける物事たち。さまざまなかたちで残った傷のあとは、冷えた油みたいなものだ。いずれ燃えるかなしさとか。
体は燃えない。そういうことも、わからなかったが、たぶんうっすら気づいていた。
だからあのとき、冷えた油に反応したのだ。あれからもう、体は凍らない。


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