夕暮れのピンチヒッター/済谷川蛍
はもじもじしながらこの間を耐え忍んでいた。司書は本を調べ「あれ?」という顔をして、「これ、うちのじゃありませんね」と言った。不条理小説として有名な上下巻の本だったが、あまりに不条理すぎて1ページ読んだだけで吐き気を催し、貸し出し期限をオーバーしていた本だった。仕方がないので寄贈しますと言った。司書のおばさんは代わりに、こっちなら簡単だからと、返ってきたばかりの棚に置いてあった大きな文字の本を貸してくれた。意外と親切なおばさんだった。
図書館から出ると、親子がキャッチボールをしている。どうしてこんなところで…と思っていると、父親が息子に向かって「デッドボールの手本を見せてやろう」と言って僕のほう
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