笛吹きケットル/ただのみきや
からも注ぎ口からも
――完全に沸騰したのだ――
だがケットルはただグラグラしているだけだ
必死に笛を吹いてはいるが
かつてのような音色は出なかった
やつは高熱と高圧にさらされながら
いつまでも音の出ない笛を必死に吹き続けていた
おれはだんだんケットルが憐れになってきた
かつてはできていたことが
今は できなくなったのだ
「来年度、お前を会社にとっての戦力とは見ていない」
「実績が上がらなかった営業所は閉鎖だ」
「君は自分で思っているほど評価されているわけではないよ」
何度 おれも「お払箱」「役立たず」で悔し涙を流したことだろう
おれは火
[次のページ]
戻る 編 削 Point(21)