バンジージャンプを1階から/木屋 亞万
つめた街は
白黒のまま記憶へと立体的に焼き付いている
離散した体の一粒ひと粒を集めて再構成するまでに
だいたい五年くらいかかった
どれだけ頑張って探しても指が三本見つからず
どうしてか目玉は一つ増えていた
三度目
とある日曜日
連れてこられたショッピングモールの一階で
一人の人間に見惚れてしまって真っ逆さまに空へとバンジー
月の手前に来たころに
今までにない虚しさが心にどんより立ち込めて
体中の毛穴に小さな針を刺される心地がした
体が重く沈み込んで
視界全体が闇の波にゆらゆら揺れた
とたんに今度は重力で体が引き裂かれそうになり
地面へ叩き付けられた
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