病床で/イナエ
 
                 
体の中を這い回るヤスデのような生き物と
近くを流れる水の気配に目覚める

が 眼は閉じたまま
それでも見える 
隣のテントから覗く逆三角形の顔
とがった鼻とスコップのような牙
ぼくを監視している眼の無い目
 
 キャンプしているぼくらの
 リーダーが天井を歩いて来る
 逆さまのままぼくをのぞき込み
 ぼくに繋がれた計器の目盛りを読み 
 導尿管から落ちた尿の量を確かめて
 毛布の裾からはみ出した足をつかむ
 
 ー大丈夫 たくさんの管に繋がれていて
  この世から逃げ出せはしないからー

足をつかんだ手がはい上がってくる
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