果樹園/葉leaf
り、陥没していたりと様々である。そして、その四角形は多様な意味を帯びている。四角形のこの一辺は、あの若者が毎朝ランニングで通る道に接している、四角形のほぼ中心では、あそこの家の猫が糞をした、四角形のこの部分には、かつて別な種類の果樹が植わっていた。そして一番大切な意味は、その四角形が、農民の労働が大量に撒き散らされることによって、著しく傷つきまた喜んだということである。
労働は直接価値を生み出すのではない。いくつもの媒介を経て、労働は間接的に、ぐねぐねしたベクトルに沿って価値の方向へと向かう。農民は労働にすべてをつぎ込む。朝食の味わいも、妻との口げんかも、息子の出世も、趣味のハーモニカ弾きの
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