影虫/まーつん
 
なのかもしれず
 垢のようにこそげ落とした
 暗い意識の表皮
 その名残なのかも

 影虫は
 窓から注ぐ日射しに触れると
 音もなく縮み燃え尽きて

 光の水溜りの中に
 踊りながら沈んでいく
 たくさんの黒い影 虫ケラ

 君は
 陽ざしの中を歩いてきた
 我が身を想い
 光の中に死んでいく
 闇のカケラたちを憐れむ

 頬を伝う涙は
 腐り水のように濁り
 口に漏れる嗚咽は
 紙くずのように皺枯れて

 神を呪いながらも
 救いを乞うて手を伸ばす

 空を塞いだ
 染みだらけの
 天井に向かって

 その刻
 古い冷蔵庫の扉が
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