幻想の住人/まーつん
I
君は幻想の住人
窓の外に映る
灰色の景色の向こうに
白いバラの咲き乱れる
見渡すばかりの平原を見る
鋼鉄の爪が
肌に残した傷跡
それは
現実を生き延びる為の
突き刺さる教訓となって
耳をふさぐ君のうなじに
静かに 執拗に 囁き続けていた
II
海に漂う原生動物から
陸に立ち上がる現生人類へと
進化の背中を押してきたのは
食うか食われるかの
命のやり取りと
血を分けた子供への
折れることのない
慈愛の柱
他者への不信と
家族への偏愛が
生き延びる為の身体を
優れたもの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)