幻想の住人/まーつん
 
I

 君は幻想の住人

 窓の外に映る
 灰色の景色の向こうに
 白いバラの咲き乱れる
 見渡すばかりの平原を見る

 鋼鉄の爪が
 肌に残した傷跡
 それは
 現実を生き延びる為の
 突き刺さる教訓となって
 耳をふさぐ君のうなじに
 静かに 執拗に 囁き続けていた

II

 海に漂う原生動物から
 陸に立ち上がる現生人類へと
 進化の背中を押してきたのは

 食うか食われるかの
 命のやり取りと
 血を分けた子供への
 折れることのない
 慈愛の柱

 他者への不信と
 家族への偏愛が

 生き延びる為の身体を
 優れたもの
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