エアコン/ホロウ・シカエルボク
れそうなの、助けて、と衣擦れのような声で言った、助けてってもヨ…ここから子供を取り上げてくれそうな病院まではずいぶんな距離があるし、だからってこのままにしておくわけには…俺は意を決して彼女を抱きあげた、べらぼうに重たかったけど我慢した、もう安ワインの酔いなんかどっかに行っちまってた、悩んでいる暇はない、俺の家で生ませるしかない、どんなことをすればいいのか判らないが…俺はずいぶん前に、ニュースで見た自宅出産のシーンを思い出した、あれは、確か風呂場に水を張って…ええいッ、悩んでる暇なんかねえ!俺は女を抱えて揺らさないように急いだ、それがどんなに難しかったか、そしてどんなに体力を消耗したのか、どんなに唾
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