さよならルル/吉岡ペペロ
 
ガブでなくて良かった」
リリは上を見上げたまましっとりとした声で鳴きました。
「リリ、リリがガブでなくてよかった」
「ガブってなに?」
「ガブ?」
ルルもリリももうガブのことは忘れていました。
「おろかな蛙よ、またあした食べてやるからなあ」
またどこからか歌が聞こえてきました。
「こわい、ルル」
「大丈夫だよ、リリ」
うえからなにかが落ちて来ました。
水面の星畑がやさしく揺れています。
ガブのうしろ足でした。
ルルもリリもうえを見つめたままなのでそれには気づきませんでした。
気づいたとしてももうガブのことは思い出せません。
蛙は生きている仲間たち、兄弟たちのことしか、
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