さよならルル/吉岡ペペロ
 
された気持ちにはならないのです。
それは尾で泳いでいたのが、ある日とつぜん水を蹴って飛び出した時と似ていました。
「あ、あのときのことはおぼえてる・・・水を蹴って飛び出したときのことは」
ルルは蚊や蝿をたくさん食べたあと、いつもあのときのことを思い出すのです。
水を蹴って空気にふれてしまったあのときのことを。

池のほとりには靄がかかりはじめています。
靄に月明かりがほの赤く溶けています。
「リリもそうなのかなあ」
ルルが鳴き声を響かせます。
ルルはバック転をしてリリの葉っぱに飛び移りました。
リリはちいさな反動に弾みながら、にっこりと微笑みました。
「あら、ルルもなの?」
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