さよならルル/吉岡ペペロ
 
鳴いて、
「思い出したことなんかないのに、思い出せないってへんだな、思い出したことなんてあったっけなあ」
ルルはなんだか可笑しくなってまた鳴きました。

水面は星畑で、夜風のたてる音にきざまれています。
うしろからリリの鳴き声が聞こえました。
「ルル、あそぼうよ、ルル、あそぼうよ」
なまえはふしぎです。
なんにも思い出せない蛙たちなのに、なまえだけは忘れずにおぼえているのです。
「リリ、ぼくもきみを待っていたよ」
ルルはここのところ、いつも気だるい気分でした。
毎日毎日、蚊や蝿がうんざりするほど飛び回っていて、いつもいつもお腹が一杯なのです。
なのに心はざわついて、満たされ
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