叢の日/ただのみきや
で埋め尽くされ
またある日にはそれがすべて綿帽子に変わっていた
陽炎の揺らめきが不可解で
太陽はいまの何倍も明るかった
蛙たちはいったい何を繰り返し告げていたのだろう
夕闇の訪れを目前にして
そう あの叢だ
ああ
老いてから水彩画を始めた母の拙い絵
麦わら帽子をかぶった子供の後ろ姿
あれは
おれだったのか
だが幼いおれの姿と
死んだあの子が重なってしまう
それとも家を出て行ったもう一人の息子なのか
あどけない微笑み
胸が疼き 熱くこみあげてくる
だが
もう遠すぎる
確かめる術などないのだ
いのちはすでに粗方没し
意識を鮮やかに燃やしている
そう
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