叢の日/ただのみきや
ともなく
役立たずの怠け者で終えたのだ
だが
どこか懐かしい風景だ
ああ四歳か五歳のころ
家の近くにあった広い叢か
あのころはジャングルのように感じたものだ
いま思えば官舎か何かを取り壊した跡地だったのだろう
無造作にコンクリート片や煉瓦の塊が転がっていた
忽然と一本の水道管が斜めに立っていて
蛇口からは澄んだ水が流れっぱなしのまま
そこに小さな池ができていて 蝦蟇の穂が
お祭りで見かけるフレンチドックみたいで
初めて蝶々を追いかけた記憶がある
大きすぎる帽子で捕まえて そっと覗くと
不思議なことに蝶々は消えていた
ある日
そこは見渡す限りタンポポの黄色で埋
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