白い国(小説)/莉音
女の頭を撫で、部屋の外へ出て行った。そうして、誰かと、少女の理解できない言葉で話している。二人はゆっくりと足音を立てて、部屋から離れて行った。
もうここで何年すごしたのだろう。ここがどこで、今がいつで、何も分からない。昔のことは何も思い出せないけれど、悲しくて、辛くて、そんな感情ばかりが溢れ出てくる。あの男の人は、時々少女に会いにきた。いつも優しく笑っていて、知らない誰かと一緒に来る。ときには夢の中にまで、彼は来て、彼女に安らぎを与えた。けれども今日は違った。少女の中で、男の声が何度もこだました。私がかわいそうなのは、窓の外が見れないからなのだろうか、外の世界に歩みだせないからなのだろうか
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