白い国(小説)/莉音
 
うか。私がいるこの部屋が、世界と寸断されている個室だからだろうか。

 ある日の夜、白衣の男が来た。少女は尋ねた。
 ―ねぇ、ここはどこ?―
 「ここは病院だよ」
 ―病院?―
 「そうだよ」
 ―あたし、病気なの?―
 「大丈夫だよ、すぐによくなるから」
 男が去った後、窓の外を見ようと思ってカーテンを開けたが、怖くて外が見られなかった。けれど、ガラスに映った女は、もう少女ではなかった。もう大人になりきった、一人の女がそこには映っていた。
 
  これが、あたし?

  どうして?

 女は暗いところに慣れた目で、必死に光を見ようとして、カーテンを開けて、窓の外を見た。外の世界は冷たくて、何の色もない、果のない真っ白な場所だった。


 ――翌日の朝、雪国のとある病院の窓の下で、白く輝く雪の上に横たわる、真っ赤な血を流した女の遺体が見つかった。半開きの瞳から流れた涙の跡が、冷たく凍り付いていた。

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