白い国(小説)/莉音
 
まるで生まれたときからここにいた気がする。窓の外は常に明るく輝いていて、一度も少女は窓にかけられたカーテンを開けたことはなかった。

 その時、不意に外からドアが開けられた。長い白衣を着たその男は、少女に安堵と懐かしさの気持ちを思い出させた。男は少女に言った。
「窓の外には何があると思う?」
 少女は答えず、怯えているばかりだった。男がカーテンを開けようとすると、少女は悲鳴を上げて、ベッドの上で小さく丸くなった。光が怖くて、けれどもそれが世界なのだと気づいていて、絶望しか感じられなかった。
「かわいそうに」
 そう、男が静かに、それ以上なく優しい声で呟いた。それから無言で少女の
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