帰る(五月雨降られ): 2013/AB(なかほど)
具屋の鏡に映った僕の
首筋からプツプツが沸き上がって
顔中に広がろうとしていた
雨上がりの樹木からしたたり落ちる液に
かぶれたんだろう
やわだなあ なんて
あんなに笑うことはなかったじゃないか
君のせいなんだから
それに君の方がずっとやわなのは
知っていたさ
僕よりもずっとやわなのは
と思いながら
戸越銀座の駅で降りた
もう一度公園まで歩いて
噴水を眺めてくれば
笑い声が聞こえてくるのだろうか
雨も降っていないのに
君の専攻はなんだったけか
君の探していた文書はなんだったんだろう
君の見たかった世界はなんだったんだろう
あの店の前で笑い転げてた君にはもう
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)