ひとつ いつわり/木立 悟
二本の渦の樹
鳥の声にまたたく
河口の骨の陽
波に波を描いてゆく
誰もいない路地をちぎり
原へ原へ撒いている
やがて生える光
水をまさぐる葉
消えてはおらず
ただ白の側に在り
その白も 白の白もまた
消えかけながらそよいでいる
廃路のそばで 立ち止まる冬
水は光に 無言で従う
小さなものへ
小さなものへと
くたびれた背に 満ちる階段
そこに居るもの 居ぬものの影
霧と塩に
吹かれたなびく
川の光が
思い出したように鳴る
窓は鱗 波は弦
岸に立つもの
鼓動しずかに
鬼を追い疲れ
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