漂着物/ただのみきや
 
この夜の向こう

蒼白い悲しみに凪いだ街から

漂着した片言に縁どられ

幽かに像をなす空白

難破した夢

偽りという救命胴衣を着けずに

真実という黄金を抱いたまま

眩い深層に沈んで行った

あなたの 

存在しない死体

蘇生しようとして

唇を押し当てるもの

闇がその指先で輪郭をなぞると

かつて発せられたことばの幽霊たちが

夜の底を周遊する鮫のように

静かに無限大を描き

時の流れを相殺する時計となる

だが月がすっかり溶け落ちて

世界が瞼を閉じるその瞬間

わたしは光の中に覚醒し

すべてを失って
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