漂着物/ただのみきや
この夜の向こう
蒼白い悲しみに凪いだ街から
漂着した片言に縁どられ
幽かに像をなす空白
難破した夢
偽りという救命胴衣を着けずに
真実という黄金を抱いたまま
眩い深層に沈んで行った
あなたの
存在しない死体
蘇生しようとして
唇を押し当てるもの
闇がその指先で輪郭をなぞると
かつて発せられたことばの幽霊たちが
夜の底を周遊する鮫のように
静かに無限大を描き
時の流れを相殺する時計となる
だが月がすっかり溶け落ちて
世界が瞼を閉じるその瞬間
わたしは光の中に覚醒し
すべてを失って
[次のページ]
戻る 編 削 Point(18)