ひとつ 幕間/木立 悟
 




径を照らす茶色の花
川のかたちを隠す樹の影
砂岩の崖のはざまを下り
陽は淡く細く鳴りひびく


光はまぼろし
こがねは緑
巨大な片羽
星の同義語


午後の陰を
引いてゆく波
冬は残る
交差に従う


水と光の坂が立ち
流れる空を映している
音は舟
入り江をめぐる


白と黒の壁
降りない猫
木の車輪が
森の入口で鉱になる


はらわたを照らし
崖の陽はすぎる
ささやきと結晶
生まれるうたの手を造る


空を刻む遅い色
原を止める陽
寄せる火の波
空のかけらが 
短い鉛の矢に降りそそぐ


午後
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