まだ生きている人に向けた四章/破片(はへん)
 
従する。花畑でなくても、路傍に咲くタンポポやイヌノフグリに笑みを零す素敵な女の子。フラウ、とぼくだけに呼ばれる女の子。自身が花のようなフラウ。幼い女の子。
 風を一つだけ捕まえてあげる、といって、たった一つの風を三分間もぼくと彼女自身にぶつける。彼女といる時だけぼくは人間として、表皮のさっぱり乾いた、健康で十全な心持ちを得る。十分おきに鳴るぼくの携帯電話をフラウは不思議そうに見る。ぼくはそれを無視する。彼女の声さえ聞いていればいいのだった。
 ぼくは、同僚の女性とセックスする。買い置きしたスキンが乾く暇はない。恋人を作る気もまた、ない。翌日の仕事が憂鬱になる。それでもぼくは女性を抱く。今日は上
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