まだ生きている人に向けた四章/破片(はへん)
うが。降りしきる雨を避けるため、購入した傘を差して屋外に出る。そろそろ電車に乗らなければ。夜に友人宅で麻雀をする予定があった。友人の家に辿りつく。雨は上がっている。ぼくはいつも、その友人の家に、購入してから一日も経たない真新しい傘を置いて帰る。そろそろ、新しい傘の供給がないぼくの家から、一本の傘もなくなるかもしれない。しかしそれについて危機感らしきものはない、と感じる。昨日。今日は残り二本の、一本を持って外に出たら、スーツを着た日本のサラリーマンみたいな風体の外国人が、「ワォ!」とか言いながら駆けていって、彼の足が散らした水飛沫を、腰の曲がった老婆がものともせず、濡れ鼠になって歩いていたから、持っ
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