足の裏のカタツムリ/茜井ことは
何もないのに! 虫かごなんて、あったっけ……」
そうブツブツと小言をいいつつ、母は物置をしばらく漁った後、虫かごを取り出してきて
「土は用意できないから、とりあえずここに入れときなさい。餌はレタスでなんとかなるでしょ……」
と、瞬く間にカタツムリの家を作ってくれた。わたしは、そんな母の苦労などお構いなしに、ろくにお礼も言わずカタツムリを虫かごの中に入れた。そして、その中を動き回るカタツムリを見つめながら、のんきに彼らとの生活を夢見ていたのである。
わたしが譲り受けたカタツムリは茶色の貝殻を背負っていたのだが、ある日、白い貝殻を背負ったカタツムリが、彼らに仲間入りすることになった。
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