空に浮かぶ棺/まーつん
 
 おっちら
  一人 棺を引き摺って行った

  ところがだ

  いい塩梅の捨て場を見つけ
  いざ亡骸を取り出そうと
  ズボンのボッケを弄っても
  棺の蓋の 鍵がない

  途方に暮れて立ち尽くし
  やむなくその場を立ち去った

  そして 忘れることにした

  古い楡の木のふもと
  置き去りにされた棺は
  草が覆い蔦が絡みつき
  這いまわる虫に齧りとられて

  やがてはゆっくりと
  緑の苔に覆われる

  そうしてこの
  人目に触れない
  木々の景色の中に
  埋もれていくだろう



  そんな風に願いつつ
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