午後と冬/木立 悟
蝶を呑んだものの肌に
蝶が現われ
真昼の終わりまで
話しつづけている
小さな音の
まわりだけの冬
鳥は追う
羽を忘れる
石の径の影
曇のなかの声
動けない音
長く細い 指に押され
青空が建物のうしろから
径の上の雨を見ている
ほぐれゆく
水の緒
常に冬の街がひろがり
かろうじて差し出された灯りには
灰とむらさきとこがねと緑
片目と頬を染めてゆく
河口 叫び 砂の文字
鉛と白の樹
花の前にもうしろにも
巨きな巨きな 水の疑問符
斑の十字
囲まれた土地
棄てられたしるし
蒼と蒼
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