午後と冬/木立 悟
と蒼の波
砂を区切る
命ではないもの
かすかな舟が
冬をすぎる
影と花
曇のはざまを映す水
そこにはないもののように
そよいでいる
いつのまにか真新しい土
いかずちを記し
手を焼かれ
立ちつくす
石灰と木の階段
柱から柱へ動く指
手放したはずの風景が
流れに流されることなくゆらめいている
むらさきからむらさきへ
半身から半身へ飛び終えても
冬は冬を巡り
冬に至り 冬をすぎる
枯れた空に沈みながら
鏡は鏡のうしろを見ている
中庭の空 廃園の空
銀に触れる長い指
短い雨を歩む鬼
白と黒の血のにおい
冬の原 そのむこうもまた
冬の原
指は去り
午後は残る
空に座すもの
冬を冬に撒いてゆく
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