フェルミのみた泡は/mizu K
指さす
からっぽを指さす
うつろな瞳がそれでも夕映えに
数日前のある紙面の写真とうりふたつのフェルミが
泡を梱包することの困難さについて
なにも語らない
忘れさられて
忘れたまま誰もがフィルムを
それから
レンズが向けられるたびに
パトローネはすこしずつ
内の空間をひろげて
背泳者のいたあたりの残照と
ぽく、と吐かれた息のかたち
波紋のなぞるあたりが
測光され
警告は無視され
シャッターの音が
響く
フェルミは私の手のひらの罅われたレンズのなかで夢をみている
ヤマネのようにまるまって
まるで死んでるみたいだね
あはは
リードを放擲してしまった子どもが笑
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