呪いの朝/ホロウ・シカエルボク
 
、身体にはじっとりと汗を掻いていた、亡霊のようにへばりつく汗だった、歩行の振動に合わせて、短く荒い息が口から漏れた、痩せた黒猫がお決まりの不幸の示唆のように手短に前方を横切って去っていった、どこかで犬の吠える声がした、近くのようだったけれど、方々の建物の壁でその声は跳ね返って、どのあたりで鳴いているのかまったく見当はつけられなかった、二階以上のいくつかの窓に洗濯物が干したままになっていて、そのどれもがトンネルを通過してきたように黒く煤けていた、あれはいつからあそこにあるのだろう、と俺は思った、あれを干した人間たちはもうここには居ないのだろうか、部屋の中で死んでいるのか、それともどこかへ去ってしまっ
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