言語化された街/佐々宝砂
 
言語化された街で俺はサボテンとして歩いていた 言
語化された街にある俺はサボテンとして記述された以
上サボテンとして歩く他なかったが かつて人間であ
った記憶の残滓が言語化されていたため 俺は上半身
サボテン下半身人間という姿で歩いていた なぜ下半
身が人間かというと下半身がサボテンではおそらく歩
けないからである

言語化された街は無風にして無人である 通りに沿う
家々の門扉は一様に舟の文様を持っており 俺はその
文様をペパーミント・グリーンとショッキング・ピン
クのポスターカラーで塗らねばならなかった サボテ
ンの枝は絵筆を持つに適さないので俺は足
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