言語化された街/佐々宝砂
は足指で絵筆を
握らねばならなかったのだ
言語化された街で俺はサボテンとして絶望した なぜ
俺はポスターカラーなぞを門扉に塗らねばならぬのか
俺は嘆息して空を仰ぎ見た 俺のサボテンの目に(目
があると記述すればサボテンにも目はある)名付け得
ぬものが映った 俺は感動を禁じ得なかった おお!
名付け得ぬものよ 原初の混沌たる丸きものよ 無意
味にして無節操たる天空の狂女よ 月よ!
すると言語化された月が空にスルリとのぼった 俺は
沈鬱な思いで明るい満月を見つめた
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