ひかり ゆくえ/木立 悟
ひとつの鏡
三つの姿
耳の真上を
すぎてゆく花
つなわたりの月
心に削られ
かけらは降り
夜は
夜ではないかのように
水を昇り 黒は暴れ
さらに高く連れ去られてゆく
名前を記す間も無いままに
花はただただ降りそそぐ
明るい光が砂に触れ
光も砂も互いを忘れる
海を覆い 空を呑み
再び沈む打楽器の群れ
浜を照らす雷雲
音は何処にも無いかのように無い
遠い波
最も空に近く
見る者も無く
雨が夜を割り
水は増えずに散らばる
窓際に点る灯
粉の鐘を鳴らす
うたは冬を呑んだ
応えは無かった
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