セプテンバー山男/カンチェルスキス
 

 秋から春までだったか
 そしてその間におれの鼻の頭には
 遠くから見てもわかるほどのおっきな面ちょうができて
 昼飯を毎日食いに行った工場前の中華料理屋の婆あから
 不幸を呼ぶ男のように思われた
 うまい中華丼にうまい中華スープ650円の代金を千円で払うとき
 婆あはうとましげな目でおれの鼻の頭を見つめ
 この男に未来永劫希望はないと無言で宣告した
 それから手づかみにしたアツアツのおでんをはなすように
 釣り銭を渡した
 白髪まじりのほつれ毛
 腕のいいコックである夫は町内会の親善旅行で
 上海に向かった日
 店内の隅の頭上のテレビ台では
 終了間際のNHKの連
[次のページ]
戻る   Point(6)