まだ見ていないものがある限り俺は何も知らない/ホロウ・シカエルボク
 
俺は存在の中に巨大な穴ぼこを見る、まだ知らない場所がある、まだ見ていないものがある、この穴の中に…そのことがはっきりと判る、俺はその穴ぼこを覗きこもうとする、穴の中に可能な限り身体をねじ込んで、そこにある何かを見ようとする、でも見えない、何も感じることが出来ない、塗られたような暗闇と、塞がれたような静寂がそこには充満している、他のものが入る余地がないように思える、足りない、まだ何かが足りない、その何かは、生きているうちになんとかなるものなのかもしれないし、生きてるうちにはどうしようもないものなのかもしれない、俺は穴ぼこの前で舌打ちをする、まだ見たことのないものがそこにある、まだ聴いたことのないもの
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