まだ見ていないものがある限り俺は何も知らない/ホロウ・シカエルボク
俺の目につかないところでやるんだね―これだけのことを並べている間に、あれほど切り裂いた指先の傷は塞がり、幾何学的な瘡蓋に覆われ、あれほど溢れた血液は再び生成される、それは体内を駆け巡り、冷えるだけ冷えた温度を再び熱くする、判るかい、その繰り返しだ、俺がやっていることのすべてはそうした反復なのさ、同じ傷口に沿ってもう一度切り裂くのさ、もう一度そこから生まれてくる熱が欲しいのさ、したり顔なんか死ぬまでしないぜ、それはこの世で一番恥ずかしいことだ、まだ見ていないものがある限り俺は何も知らない、まだ聴いていないものがある限り俺は何も―薄暗い天井の隅に俺はそう話しかける、声は僅かに反響して意志を形作る、俺は
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