沈黙/岡部淳太郎
ぼろぼ
ろに欠け落ちて、犬の毛は生え変る、神は不在でも、石
は路傍で見つづけているから、歩いて、いかなければ、
黙ってしまえば、
誰にもわからないだろう、
黙ってしまえば、
知られることはないだろう、
私が遺してきた、
すべての 羞恥、
私が遂げてきた、
すべての 病歴、
黙ったままなら、
忘れてしまえるだろう、
十一月の、渇きであり、また乾きでもあったのか、この
赤い石の陰に、来なさい、すべて巡るものは、夕陽の恩
寵のもとにある、すきまから、吠える犬、声帯を切除さ
れな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)