沈黙/岡部淳太郎
 
れながらも、十と一月(ひとつき)の、時間の名、のなかで、気体は
目に見えない棘を、運んでくる、その巡りは、いくつも
の、赤い掌を生みだしては、落としていく、掌たちのそ
よぐ、かさかさと、乾いた、声、をかぶる、このわびさ
びの労苦を、行進させよ、新しい、時の巡りへと交代さ
せよ、(風説にならう、季節です、)きっと、黙ったま
まなら、誰とも分かち合えないだろう、だからこそこの
沈黙をと、つぶやきながら、歩く散歩道、遠く、主のい
ない社が見える、記憶の石のなかで、蛇が回っている、



(二〇一二年十一月)
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