月あかりの羽ばたき/まーつん
 
れは

  部屋の中にとって返し
  望遠鏡を手に取って
  寒さに肩をすくめながら
  ベランダに戻る

  そして 接眼レンズを覗き込むと
  闇のビロードに横たわる
  大きな満月の天辺に

  光の波が
  小さく 小さく
  立ち上がっていくのだった

  その姿は
  前髪を向かい風にそよがせる
  人の横顔にも似ていた

  私はじっと目を細め
  倍率を上げた
  すると

  波に見えたのは 
  金色の光で出来た
  鳥の群れだとわかった

  その羽音が
  月の表面からこぼれ落ち
  この星へ この街へと
  霧雨
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