月あかりの羽ばたき/まーつん
れは
部屋の中にとって返し
望遠鏡を手に取って
寒さに肩をすくめながら
ベランダに戻る
そして 接眼レンズを覗き込むと
闇のビロードに横たわる
大きな満月の天辺に
光の波が
小さく 小さく
立ち上がっていくのだった
その姿は
前髪を向かい風にそよがせる
人の横顔にも似ていた
私はじっと目を細め
倍率を上げた
すると
波に見えたのは
金色の光で出来た
鳥の群れだとわかった
その羽音が
月の表面からこぼれ落ち
この星へ この街へと
霧雨
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)