詩とフィクション 詩と向き合う/葉leaf
 
て、その虚構の豊かさを感じ取っていくことになります。現実には起こり得ないような奇妙な物語は、それだけで幻想的で意表を突き味わい深いものです。
 では次の詩はどうでしょう。

犬は内なる犬のなかで走り
猫は内なる猫のなかで眠る
鳥は空に釘づけになったまま鳥のなかで飛び
魚は砂漠をこえて水にあえぎながら魚のなかで泳ぐ
   (田村隆一「緑色の観念形態」より)

 「内なる犬」とは一体何でしょう。そんなものは存在しないからこの詩は現実を語っていずフィクションなのだ、という考え方もあるでしょう。ところが、この詩で田村は何か真実を語ろうとしているようにも思えます。「内なる犬」とは犬の内面の
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