詩と科学 詩と向き合う/葉leaf
 
法則による推論によってどんどん新しい認識を増やしていくのです。つまり、自然科学は、明確に意味の定まった抽象的な「概念」(圧力、体積、温度など)を用いて、推論によってどんどん人間の外界に対する認識を増していくのです。
 それに対して詩はどうでしょうか。まず、詩は、私たちが出会う具体的な生の体験を語ります。しかもその体験は一回限りで、二度と繰り返すことはないものです。そして、詩が描く体験というものは、決して数字などで表されるものではなく、その体験をめぐる状況・文脈に依存しており、詩の言葉は自然科学の概念のように明確な意味を持っていません。例えば、上掲した歌にある「家」という言葉。これは、自然科学にお
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