マネキン/まーつん
 
石膏で出来た、
  血の通わない
  乾いた身体。

  その片足を引きずりながら

  カツリ、カツリと。

  部屋の戸口の向かいには、
  街路に面した窓が一つ。

  五階から見渡す
  二車線の道路から、
  行き交う車のエンジンが
  物憂げな唸りを ガラス越しに響かせる。

  マネキンは
  顔のない顔を微かに俯けつつ、
  部屋に一つしかないテーブルの
  パイプ椅子を引きずり、
  ごつり と音を立てて、硬い腰を下ろす。

  そして、ぎこちない動きで身をかがめ、
  片足を根元からはずして、テーブルの上に置く。

  ガタリと
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