僕のマスターベーション6/花形新次
かに老婦との会話に(と言っても一方的に話しているだけだったが)気を取られていた。やっと動き出した車の流れにも意識は取られていたのだと思う。女の子の目的地のバス停を通り過ぎようとしていた。
俺は心配になって女の子に
「ここで降りるんだよね?」と聞いた
女の子は涼しげな表情をまったく変えることなく無言だった。
運転手は、まだ気づかずに時折自分の言葉に笑ってさえいた。
俺は腹が立った。人間の鈍感さに。
俺は運転手とも女の子とも同時に乗り合わせたことが何度かある。
女の子が養護学校に通っていて、上手く話せないことも知っている。
俺が知っているんだから、運転手だって知っていておかしくないはず
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