躯は踊る、無作為なときの中を、ひとりで/ホロウ・シカエルボク
そんな草の船の上に乗っていたことがある、川の流れはやはり早く、とても立っていられるようなものではなく、カフェ・オレのような水を被り、ときには飲みこんでしまい、激しく噎せ、だけど気は抜けず、枝との接点だった僅かな突起にしがみついて必死にしていなければならなかった、おれはどうしてこんなものに乗ってこんな流れを下っているのだろう、とそんな考えが一瞬脳裏をよぎったが、とてもそんなことにこだわっていられる状況ではなく、そのことはすぐに忘れた、代わりに思い出したものは、台所の床下に眠っている刹那の思想の躯のことだった、冷たく、湿気た土の中に眠っている―軽くなったせいだ、とおれは思った、軽くなってしまったせいで
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