ハンカチ一枚/カンチェルスキス
 
草むらの奥に逃げ込んだ。


 親猫はどこにもいなかった。
 彼は手を伸ばし黒猫をつかんだ。
 彼の手のひらにおさまる大きさだった。
 目ヤニがいっぱいついていて、体の毛も
 ぐしゃぐしゃになっていた。


 体に手をあてがうと小刻みに震えてるのがわかった。
 かなり衰弱していた。


 彼はどうしたらいいのかわからなかった。


 彼は黒猫を元いた草むらに戻した。
 振り返ると、黒猫は草むらから出てきて、
 必死に鳴きながら、彼を追いかけてきた。
 あまりにもちっちゃな生き物が
 彼を追いかけてくる。
 彼は振り向くのをやめた。しだいに駆け足になった。
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